共通テスト 数学II・数学B・数学C 2025年度試作問題 第5問 解説
2025年度より実施される、新学習指導要領に対応した大学入試共通テストの試作問題(2022年11月発表)です。詳細はこちら。
【第4問~第7問から3問選択】
問題編
問題
(正規分布表は省略しています)
以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて 15 ページの正規分布表を用いてもよい。
花子さんは、マイクロプラスチックと呼ばれる小さなプラスチック片(以下、MP)による海洋中や大気中の汚染が、環境問題となっていることを知った。花子さんたち 49 人は、面積が 50a(アール)の砂浜の表面にある MP の個数を調べるため、それぞれが無作為に選んだ 20cm 四方の区画の表面から深さ 3cm までをすくい、MP の個数を研究所で数えてもらうことにした。そして、この砂浜の 1 区画あたりの MP の個数を確率変数 $X$ として考えることにした。
このとき、$X$ の母平均を $m$、母標準偏差を $\sigma$ とし、標本 49 区画の 1 区画あたりの MP の個数の平均値を表す確率変数を $\overline{ X }$ とする。
花子さんたちが調べた 49 区画では、平均値が 16、標準偏差が 2 であった。
(1) 砂浜全体に含まれる MP の全個数 $M$ を推定することにする。
花子さんは、次の方針で $M$ を推定することとした。
方針
砂浜全体には 20 cm 四方の区画が 125000 個分あり、$M=125000\times m$ なので、$M$ を $W=125000\times\overline{X}$ で推定する。確率変数 $\overline{X}$ は、標本の大きさ 49 が十分に大きいので、平均 $\dBox{ア}$ 、 標準偏差 $\dBox{イ}$ の正規分布に近似的に従う。
そこで、方針に基づいて考えると、確率変数 $W$ は平均 $\dBox{ウ}$ 、標準偏差 $\dBox{エ}$ の正規分布に近似的に従うことがわかる。
このとき、 $X$ の母標準偏差 $\sigma$ は標本の標準偏差と同じ $\sigma=2$ と仮定すると、$M$ に対する信頼度 95%の信頼区間は\[ \myBox{オカキ}\times10^4\leqq M\leqq \myBox{クケコ}\times10^4 \]となる。
$\mybox{ア}$ の解答群
0: $m$
1: $4m$
2: $7m$
3: $16m$
4: $49m$
5: $X$
6: $4X$
7: $7X$
8: $16X$
9: $49X$$\mybox{イ}$ の解答群
0: $\sigma$
1: $4\sigma$
2: $7\sigma$
3: $16\sigma$
4: $49\sigma$5: $\dfrac{\sigma}{2}$
6: $\dfrac{\sigma}{4}$
7: $\dfrac{\sigma}{7}$
8: $\dfrac{\sigma}{49}$
$\mybox{ウ}$ の解答群
0: $\dfrac{16}{49}m$
1: $\dfrac{4}{7}m$
2: $49m$
3: $\dfrac{125000}{49}m$
4: $125000m$
5: $\dfrac{16}{49}\overline{X}$
6: $\dfrac{4}{7}\overline{X}$
7: $49\overline{X}$
8: $\dfrac{125000}{49}\overline{X}$
9: $125000\overline{X}$
$\mybox{エ}$ の解答群
0: $\dfrac{\sigma}{49}$
1: $\dfrac{\sigma}{7}$
2: $49\sigma$
3: $\dfrac{125000}{49}\sigma$
4: $\dfrac{31250}{7}\sigma$
5: $\dfrac{125000}{7}\sigma$
6: $31250\sigma$
7: $62500\sigma$
8: $125000\sigma$
9: $250000\sigma$
(2) 研究所が昨年調査したときには、1区画あたりの MP の個数の母平均が 15、母標準偏差が 2 であった。今年の母平均 $m$ が昨年とは異なるといえるかを、有意水準 5%で仮説検定をする。ただし、母標準偏差は今年も $\sigma=2$ とする。
まず、帰無仮説は「今年の母平均は $\dBox{サ}$ 」であり、対立仮説は「今年の母平均は $\dBox{シ}$ 」である。
次に、帰無仮説が正しいとすると、$\overline{X}$ は平均 $\dBox{ス}$ 、標準偏差 $\dBox{セ}$ の正規分布に近似的に従うため、確率変数 $Z=\dfrac{\overline{X}-\mybox{ス}}{\mybox{セ}}$ は標準正規分布に近似的に従う。
花子さんたちの調査結果から求めた $Z$ の値を $z$ とすると、標準正規分布において確率 $P(Z\leqq -|z|)$ と確率 $P(Z\geqq |z|)$ の和は 0.05よりも $\dBox{ソ}$ ので、有意水準 5%で今年の母平均 $m$ は昨年と $\dBox{タ}$ 。
$\dbox{サ},\ \dbox{シ}$ の解答群(同じものを繰り返し選んでもよい。)
0: $\overline{X}$ である
1: $m$ である
2: $15$ である
3: $16$ である
4: $\overline{X}$ ではない
5: $m$ ではない
6: $15$ ではない
7: $16$ ではない$\dbox{ス},\ \dbox{セ}$ の解答群(同じものを繰り返し選んでもよい。)
0: $\dfrac{4}{49}$
1: $\dfrac{2}{7}$
2: $\dfrac{16}{49}$
3: $\dfrac{4}{7}$
4: $2$
5: $\dfrac{15}{7}$
6: $4$
7: $15$
8: $16$
$\dbox{ソ}$ の解答群
0: 大きい
1: 小さい$\dbox{タ}$ の解答群
0: 異なるといえる
1: 異なるといえない
考え方
新課程で新しく追加されたのは、仮説検定の部分です。ここが問われるようになったため、今までのメインだったら推定の部分が前半に凝縮されています。その分、今までよりは難易度が上がっています。
【第4問~第7問から3問選択】
解答編
問題
(正規分布表は省略しています)
以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて 15 ページの正規分布表を用いてもよい。
花子さんは、マイクロプラスチックと呼ばれる小さなプラスチック片(以下、MP)による海洋中や大気中の汚染が、環境問題となっていることを知った。花子さんたち 49 人は、面積が 50a(アール)の砂浜の表面にある MP の個数を調べるため、それぞれが無作為に選んだ 20cm 四方の区画の表面から深さ 3cm までをすくい、MP の個数を研究所で数えてもらうことにした。そして、この砂浜の 1 区画あたりの MP の個数を確率変数 $X$ として考えることにした。
このとき、$X$ の母平均を $m$、母標準偏差を $\sigma$ とし、標本 49 区画の 1 区画あたりの MP の個数の平均値を表す確率変数を $\overline{ X }$ とする。
花子さんたちが調べた 49 区画では、平均値が 16、標準偏差が 2 であった。
(1) 砂浜全体に含まれる MP の全個数 $M$ を推定することにする。
花子さんは、次の方針で $M$ を推定することとした。
方針
砂浜全体には 20 cm 四方の区画が 125000 個分あり、$M=125000\times m$ なので、$M$ を $W=125000\times\overline{X}$ で推定する。確率変数 $\overline{X}$ は、標本の大きさ 49 が十分に大きいので、平均 $\dBox{ア}$ 、 標準偏差 $\dBox{イ}$ の正規分布に近似的に従う。
そこで、方針に基づいて考えると、確率変数 $W$ は平均 $\dBox{ウ}$ 、標準偏差 $\dBox{エ}$ の正規分布に近似的に従うことがわかる。
このとき、 $X$ の母標準偏差 $\sigma$ は標本の標準偏差と同じ $\sigma=2$ と仮定すると、$M$ に対する信頼度 95%の信頼区間は\[ \myBox{オカキ}\times10^4\leqq M\leqq \myBox{クケコ}\times10^4 \]となる。
$\mybox{ア}$ の解答群
0: $m$
1: $4m$
2: $7m$
3: $16m$
4: $49m$
5: $X$
6: $4X$
7: $7X$
8: $16X$
9: $49X$$\mybox{イ}$ の解答群
0: $\sigma$
1: $4\sigma$
2: $7\sigma$
3: $16\sigma$
4: $49\sigma$5: $\dfrac{\sigma}{2}$
6: $\dfrac{\sigma}{4}$
7: $\dfrac{\sigma}{7}$
8: $\dfrac{\sigma}{49}$
$\mybox{ウ}$ の解答群
0: $\dfrac{16}{49}m$
1: $\dfrac{4}{7}m$
2: $49m$
3: $\dfrac{125000}{49}m$
4: $125000m$
5: $\dfrac{16}{49}\overline{X}$
6: $\dfrac{4}{7}\overline{X}$
7: $49\overline{X}$
8: $\dfrac{125000}{49}\overline{X}$
9: $125000\overline{X}$
$\mybox{エ}$ の解答群
0: $\dfrac{\sigma}{49}$
1: $\dfrac{\sigma}{7}$
2: $49\sigma$
3: $\dfrac{125000}{49}\sigma$
4: $\dfrac{31250}{7}\sigma$
5: $\dfrac{125000}{7}\sigma$
6: $31250\sigma$
7: $62500\sigma$
8: $125000\sigma$
9: $250000\sigma$
解説
1区画あたりの MP の個数の母平均を $m$ 、母標準偏差を $\sigma$ とし、49区画の平均値を $\overline{X}$ で表しているので、 $\overline{X}$ は、平均 $m$ 、標準偏差 $\dfrac{\sigma}{\sqrt{49}}=\dfrac{\sigma}{7}$ です。標本の大きさが大きいと考えているので、平均 $m$ 、標準偏差 $\dfrac{\sigma}{7}$ の正規分布に近似的に従うことがわかります。
$W=125000\times\overline{X}$ なので、 $W$ の平均は $125000m$ で、標準偏差は $\dfrac{125000}{7}\sigma$ となるので、平均 $125000m$ 、標準偏差 $\dfrac{125000}{7}\sigma$ の正規分布に近似的に従うことがわかります。
正規分布表で $P(0\leqq Z\leqq z_0)=0.475$ となっているのは $z_0=1.96$ なので、 $M$ に対する信頼度95%の信頼区間は、下限側が
\begin{eqnarray}
& &
125000\cdot 16 -1.96\cdot\frac{125000\cdot 2}{7} \\[5pt]
&=&
2000000 -0.28\cdot250000 \\[5pt]
&=&
(200 -0.28\cdot25) \times 10^4 \\[5pt]
&=&
(200 -7) \times 10^4 \\[5pt]
&=&
193 \times 10^4 \\[5pt]
\end{eqnarray}であり、上限側は\[ (200 +7) \times 10^4 = 207 \times 10^4\]となります。
解答
ア:0
イ:7
ウ:4
エ:5
オカキクケコ:193207
解答編 つづき
問題
(2) 研究所が昨年調査したときには、1区画あたりの MP の個数の母平均が 15、母標準偏差が 2 であった。今年の母平均 $m$ が昨年とは異なるといえるかを、有意水準 5%で仮説検定をする。ただし、母標準偏差は今年も $\sigma=2$ とする。
まず、帰無仮説は「今年の母平均は $\dBox{サ}$ 」であり、対立仮説は「今年の母平均は $\dBox{シ}$ 」である。
次に、帰無仮説が正しいとすると、$\overline{X}$ は平均 $\dBox{ス}$ 、標準偏差 $\dBox{セ}$ の正規分布に近似的に従うため、確率変数 $Z=\dfrac{\overline{X}-\mybox{ス}}{\mybox{セ}}$ は標準正規分布に近似的に従う。
花子さんたちの調査結果から求めた $Z$ の値を $z$ とすると、標準正規分布において確率 $P(Z\leqq -|z|)$ と確率 $P(Z\geqq |z|)$ の和は 0.05よりも $\dBox{ソ}$ ので、有意水準 5%で今年の母平均 $m$ は昨年と $\dBox{タ}$ 。
$\dbox{サ},\ \dbox{シ}$ の解答群(同じものを繰り返し選んでもよい。)
0: $\overline{X}$ である
1: $m$ である
2: $15$ である
3: $16$ である
4: $\overline{X}$ ではない
5: $m$ ではない
6: $15$ ではない
7: $16$ ではない$\dbox{ス},\ \dbox{セ}$ の解答群(同じものを繰り返し選んでもよい。)
0: $\dfrac{4}{49}$
1: $\dfrac{2}{7}$
2: $\dfrac{16}{49}$
3: $\dfrac{4}{7}$
4: $2$
5: $\dfrac{15}{7}$
6: $4$
7: $15$
8: $16$
$\dbox{ソ}$ の解答群
0: 大きい
1: 小さい$\dbox{タ}$ の解答群
0: 異なるといえる
1: 異なるといえない
解説
帰無仮説は、否定したい仮説なので、今の場合は「今年の母平均が去年と等しい」、つまり、「今年の母平均は $15$ である」であり、対立仮説は「今年の母平均は $15$ ではない」となります。
帰無仮説が正しいなら、つまり、今年の母平均が $15$ なら、 $\overline{X}$ の平均は $15$ で、標準偏差は $\dfrac{\sigma}{\sqrt{49}}=\dfrac{2}{7}$ です。
花子さんの調査結果では、 $\overline{X}$ が $16$ だったので、これに対応する $z$ を計算すると
\begin{eqnarray}
\frac{16-15}{\frac{2}{7}}=3.5
\end{eqnarray}となります。
正規分布表より $P(0\leqq Z\leqq 3.5)=0.4998$ なので、 $P(Z\geqq 3.5)=0.0002$ で、 $P(Z\leqq -3.5)=0.0002$ だとわかるので、和は $0.05$ より小さいことがわかります。
つまり、もし去年と同じだとするととても確率の低いことが起こったことになってしまうので、去年とはことなるといえます。
解答
サシ:26
ス:7
セ:1
ソタ:10