共通テスト 数学I・数学A 2025年度試作問題 第4問 解説
2025年度より実施される、新学習指導要領に対応した大学入試共通テストの試作問題(2022年11月発表)です。詳細は詳細はこちら。
【必答問題】
問題編
問題
中にくじが入っている二つの箱AとBがある。二つの箱の外見は同じであるが、箱Aでは、当たりくじを引く確率が $\dfrac{1}{2}$ であり、箱Bでは、当たりくじを引く確率が $\dfrac{1}{3}$ である。
(1) 各箱で、くじを 1 本引いてはもとに戻す試行を 3 回繰り返す。このとき
箱Aにおいて、3 回中ちょうど 1 回当たる確率は $\dfrac{\myBox{ア}}{\myBox{イ}}$ … ①
箱Bにおいて、3 回中ちょうど 1 回当たる確率は $\dfrac{\myBox{ウ}}{\myBox{エ}}$ … ②
である。箱Aにおいて、3 回引いたときに当たりくじを引く回数の期待値は $\dfrac{\myBox{オ}}{\myBox{カ}}$ であり、箱Bにおいて、3 回引いたときに当たりくじを引く回数の期待値は $\myBox{キ}$ である。
(2) 太郎さんと花子さんは、それぞれくじを引くことにした。ただし、二人は、箱A、箱Bでの当たりくじを引く確率は知っているが、二つの箱のどちらがAで、どちらがBであるかはわからないものとする。
まず、太郎さんが二つの箱のうちの一方をでたらめに選ぶ。そして、その選んだ箱において、くじを 1 本引いてはもとに戻す試行を 3 回繰り返したところ、3 回中ちょうど 1 回当たった。
このとき、選ばれた箱がAである事象を $A$、選ばれた箱がBである事象を $B$、3 回中ちょうど 1 回当たる事象を $W$ とする。①、②に注意すると
\begin{eqnarray} P(A\cap W)=\frac{1}{2} \times\frac{\mybox{ア}}{\mybox{イ}} \\[5pt] P(B\cap W)=\frac{1}{2} \times\frac{\mybox{ウ}}{\mybox{エ}} \end{eqnarray}である。 $P(W)=P(A\cap W)+P(B\cap W)$ であるから、3 回中ちょうど 1 回当たったとき、選んだ箱がAである条件付き確率 $P_W(A)$ は $\dfrac{\myBox{クケ}}{\myBox{コサ}}$ となる。また、条件付き確率 $P_W(B)$ は $1-P_W(A)$ で求められる。次に、花子さんが箱を選ぶ。その選んだ箱において、くじを 1 本引いてはもとに戻す試行を 3 回繰り返す。花子さんは、当たりくじをより多く引きたいので、太郎さんのくじの結果をもとに、次の(X)、(Y)のどちらの場合がよいかを考えている。
(X) 太郎さんが選んだ箱と同じ箱を選ぶ。
(Y) 太郎さんが選んだ箱と異なる箱を選ぶ。花子さんがくじを引くときに起こりうる事象の場合の数は、選んだ箱がA、Bのいずれかの 2 通りと、3 回のうち当たりくじを引く回数が 0、1、2、3 回のいずれかの 4 通りの組合せで全部で 8 通りある。
花子さんは当たりくじを引く回数の期待値が大きい方の箱を選ぶことにした。
- 当たりくじを引く回数の期待値が大きい方の箱を選ぶといいかな。
- 当たりくじを引く回数の期待値を求めるには、この 8 通りについて、それぞれの起こる確率と当たりくじを引く回数との積を考えればいいね。
(X)の場合について考える。箱Aにおいて 3 回引いてちょうど 1 回当たる事象を $A_1$、箱Bにおいて 3 回引いてちょうど 1 回当たる事象を $B_1$ と表す。
太郎さんが選んだ箱がAである確率 $P_W(A)$ を用いると、花子さんが選んだ箱がAで、かつ、花子さんが 3 回引いてちょうど 1 回当たる事象の起こる確率は $P_W(A)\times P(A_1)$ と表せる。このことと同様に考えると、花子さんが選んだ箱がBで、かつ、花子さんが 3 回引いてちょうど 1 回当たる事象の起こる確率は $\dBox{シ}$ と表せる。
- 残りの 6 通りも同じように計算すれば、この場合の当たりくじを引く回数の期待値を計算できるね。
- 期待値を計算する式は、選んだ箱がAである事象に対する式とBである事象に対する式に分けて整理できそうだよ。
残りの 6 通りについても同じように考えると、(X)の場合の当たりくじを引く回数の期待値を計算する式は\[ \dBox{ス}\times\frac{\mybox{オ}}{\mybox{カ}}+\dBox{セ}\times\mybox{キ} \]となる。
(Y)の場合についても同様に考えて計算すると、(Y)の場合の当たりくじを引く 回数の期待値は $\dfrac{\myBox{ソタ}}{\myBox{チツ}}$ である。よって、当たりくじを引く回数の期待値が大きい方の箱を選ぶという方針に基づくと、花子さんは、太郎さんが選んだ箱と $\dBox{テ}$ 。
$\dbox{シ}$ の解答群
0: $P_W(A)\times P(A_1)$
1: $P_W(A)\times P(B_1)$
2: $P_W(B)\times P(A_1)$
3: $P_W(B)\times P(B_1)$$\dbox{ス}, \ \dbox{セ}$ の解答群(同じものを繰り返し選んでもよい。)
0: $\dfrac{1}{2}$ 1: $\dfrac{1}{4}$ 2: $P_W(A)$ 3: $P_W(B)$
4: $\dfrac{1}{2}P_W(A)$ 5: $\dfrac{1}{2}P_W(B)$
6: $P_W(A)-P_W(B)$ 7: $P_W(B)-P_W(A)$
8: $\dfrac{P_W(A)-P_W(B)}{2}$ 9: $\dfrac{P_W(B)-P_W(A)}{2}$$\dbox{テ}$ の解答群
0: 同じ箱を選ぶほうがよい
1: 異なる箱を選ぶほうがよい
考え方
新課程に対応する部分は期待値のところですが、途中の条件付き確率がややこしく、期待値の計算も工夫をする必要があり、少し難しくなっています。
【必答問題】
解答編
問題
中にくじが入っている二つの箱AとBがある。二つの箱の外見は同じであるが、箱Aでは、当たりくじを引く確率が $\dfrac{1}{2}$ であり、箱Bでは、当たりくじを引く確率が $\dfrac{1}{3}$ である。
(1) 各箱で、くじを 1 本引いてはもとに戻す試行を 3 回繰り返す。このとき
箱Aにおいて、3 回中ちょうど 1 回当たる確率は $\dfrac{\myBox{ア}}{\myBox{イ}}$ … ①
箱Bにおいて、3 回中ちょうど 1 回当たる確率は $\dfrac{\myBox{ウ}}{\myBox{エ}}$ … ②
である。箱Aにおいて、3 回引いたときに当たりくじを引く回数の期待値は $\dfrac{\myBox{オ}}{\myBox{カ}}$ であり、箱Bにおいて、3 回引いたときに当たりくじを引く回数の期待値は $\myBox{キ}$ である。
解説
箱Aで、3回中ちょうど1回当たる確率は、何回目で当たるかの選び方が $3$ 通りあり、当たる確率が $\dfrac{1}{2}$ で外れる確率も $\dfrac{1}{2}$ なので、\[ 3\times\frac{1}{2}\times\left(\frac{1}{2}\right)^2=\frac{3}{8} \]と求められます。
箱Bで、3回中ちょうど1回当たる確率は、何回目で当たるかの選び方が $3$ 通りあり、当たる確率が $\dfrac{1}{3}$ で外れる確率は $\dfrac{2}{3}$ なので、\[ 3\times\frac{1}{3}\times\left(\frac{2}{3}\right)^2=\frac{4}{9} \]と求められます。
箱Aで、3回引いたときの当たる回数が0回、3回となる確率はどちらも $\left(\dfrac{1}{2}\right)^3=\dfrac{1}{8}$ なので、2回となる確率は\[ 1-\frac{1}{8}-\frac{3}{8}-\frac{1}{8}=\frac{3}{8} \]となります。なので、3回引いたときの当たりくじを引く回数の期待値は
\begin{eqnarray}
1\times\frac{3}{8}+2\times\frac{3}{8}+3\times\frac{1}{8}=\frac{3+6+3}{8}=\frac{3}{2}
\end{eqnarray}となります。
箱Bで、3回引いたときの当たる回数が0回、3回となる確率はそれぞれ $\left(\dfrac{1}{3}\right)^3=\dfrac{1}{27}$ と $\left(\dfrac{2}{3}\right)^3=\dfrac{8}{27}$ なので、2回となる確率は\[ 1-\frac{1}{27}-\frac{4}{9}-\frac{8}{27}=\frac{2}{9} \]となります。なので、3回引いたときの当たりくじを引く回数の期待値は
\begin{eqnarray}
1\times\frac{4}{9}+2\times\frac{2}{9}+3\times\frac{1}{27}=\frac{4+4+1}{9}=1
\end{eqnarray}となります。
解答
アイ:38
ウエ:49
オカ:32
キ:1
解答編 つづき
問題
(2) 太郎さんと花子さんは、それぞれくじを引くことにした。ただし、二人は、箱A、箱Bでの当たりくじを引く確率は知っているが、二つの箱のどちらがAで、どちらがBであるかはわからないものとする。
まず、太郎さんが二つの箱のうちの一方をでたらめに選ぶ。そして、その選んだ箱において、くじを 1 本引いてはもとに戻す試行を 3 回繰り返したところ、3 回中ちょうど 1 回当たった。
このとき、選ばれた箱がAである事象を $A$、選ばれた箱がBである事象を $B$、3 回中ちょうど 1 回当たる事象を $W$ とする。①、②に注意すると
\begin{eqnarray} P(A\cap W)=\frac{1}{2} \times\frac{\mybox{ア}}{\mybox{イ}} \\[5pt] P(B\cap W)=\frac{1}{2} \times\frac{\mybox{ウ}}{\mybox{エ}} \end{eqnarray}である。 $P(W)=P(A\cap W)+P(B\cap W)$ であるから、3 回中ちょうど 1 回当たったとき、選んだ箱がAである条件付き確率 $P_W(A)$ は $\dfrac{\myBox{クケ}}{\myBox{コサ}}$ となる。また、条件付き確率 $P_W(B)$ は $1-P_W(A)$ で求められる。
解説
選んだ箱がAで、3回中1回当たる確率は\[ \frac{1}{2}\times\frac{3}{8}=\frac{3}{16} \]です。選んだ箱がBで、3回中1回当たる確率は\[ \frac{1}{2}\times\frac{4}{9}=\frac{2}{9} \]です。なので、3回中1回当たる確率は\[ \frac{3}{16}+\frac{2}{9}=\frac{27+32}{144}=\frac{59}{144} \]となります。
3回中1回当たったとき、選んだ箱がAである条件付き確率 $P_W(A)$ は
\begin{eqnarray}
P_W(A)
&=&
\dfrac{P(A\cap W)}{P(W)} \\[5pt]
&=&
\frac{3}{16} \times\frac{144}{59} \\[5pt]
&=&
\frac{27}{59} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
解答
クケコサ:2759
解答編 つづき
問題
次に、花子さんが箱を選ぶ。その選んだ箱において、くじを 1 本引いてはもとに戻す試行を 3 回繰り返す。花子さんは、当たりくじをより多く引きたいので、太郎さんのくじの結果をもとに、次の(X)、(Y)のどちらの場合がよいかを考えている。
(X) 太郎さんが選んだ箱と同じ箱を選ぶ。
(Y) 太郎さんが選んだ箱と異なる箱を選ぶ。花子さんがくじを引くときに起こりうる事象の場合の数は、選んだ箱がA、Bのいずれかの 2 通りと、3 回のうち当たりくじを引く回数が 0、1、2、3 回のいずれかの 4 通りの組合せで全部で 8 通りある。
花子さんは当たりくじを引く回数の期待値が大きい方の箱を選ぶことにした。
- 当たりくじを引く回数の期待値が大きい方の箱を選ぶといいかな。
- 当たりくじを引く回数の期待値を求めるには、この 8 通りについて、それぞれの起こる確率と当たりくじを引く回数との積を考えればいいね。
(X)の場合について考える。箱Aにおいて 3 回引いてちょうど 1 回当たる事象を $A_1$、箱Bにおいて 3 回引いてちょうど 1 回当たる事象を $B_1$ と表す。
太郎さんが選んだ箱がAである確率 $P_W(A)$ を用いると、花子さんが選んだ箱がAで、かつ、花子さんが 3 回引いてちょうど 1 回当たる事象の起こる確率は $P_W(A)\times P(A_1)$ と表せる。このことと同様に考えると、花子さんが選んだ箱がBで、かつ、花子さんが 3 回引いてちょうど 1 回当たる事象の起こる確率は $\dBox{シ}$ と表せる。
- 残りの 6 通りも同じように計算すれば、この場合の当たりくじを引く回数の期待値を計算できるね。
- 期待値を計算する式は、選んだ箱がAである事象に対する式とBである事象に対する式に分けて整理できそうだよ。
残りの 6 通りについても同じように考えると、(X)の場合の当たりくじを引く回数の期待値を計算する式は\[ \dBox{ス}\times\frac{\mybox{オ}}{\mybox{カ}}+\dBox{セ}\times\mybox{キ} \]となる。
(Y)の場合についても同様に考えて計算すると、(Y)の場合の当たりくじを引く 回数の期待値は $\dfrac{\myBox{ソタ}}{\myBox{チツ}}$ である。よって、当たりくじを引く回数の期待値が大きい方の箱を選ぶという方針に基づくと、花子さんは、太郎さんが選んだ箱と $\dBox{テ}$ 。
$\dbox{シ}$ の解答群
0: $P_W(A)\times P(A_1)$
1: $P_W(A)\times P(B_1)$
2: $P_W(B)\times P(A_1)$
3: $P_W(B)\times P(B_1)$$\dbox{ス}, \ \dbox{セ}$ の解答群(同じものを繰り返し選んでもよい。)
0: $\dfrac{1}{2}$ 1: $\dfrac{1}{4}$ 2: $P_W(A)$ 3: $P_W(B)$
4: $\dfrac{1}{2}P_W(A)$ 5: $\dfrac{1}{2}P_W(B)$
6: $P_W(A)-P_W(B)$ 7: $P_W(B)-P_W(A)$
8: $\dfrac{P_W(A)-P_W(B)}{2}$ 9: $\dfrac{P_W(B)-P_W(A)}{2}$$\dbox{テ}$ の解答群
0: 同じ箱を選ぶほうがよい
1: 異なる箱を選ぶほうがよい
解説
太郎さんの結果を見て、花子さんが当たりくじを引く回数が多いと考えられる箱を選ぶ、という問題です。
太郎さんが、箱を選んで3回くじを引いて1回当たったことから、太郎さんの選んだ箱がAである確率は $P_W(A)$ です。花子さんが太郎さんと同じ箱を選んでAで3回くじを引いて1回当たる確率は $P_W(A)\times P(A_1)$ と表せます。
一方、花子さんが選んだ箱がBである確率は、太郎さんの選んだ箱がBである確率と等しく、 $P_W(B)$ です。このときに、3回引いてちょうど1回当たる確率は $P(B_1)$ なので、花子さんが選んだ箱がBで、花子さんが3階引いてちょうど1回当たる確率は\[ P_W(B)\times P(B_1) \]となります。
$A_2,A_3,B_2,B_3$ も同じように定義すると、(X)の場合の当たりくじを引く回数の期待値を計算する式は
\begin{eqnarray}
& &
1\times P_W(A)\times P(A_1)+2\times P_W(A)\times P(A_2)+3\times P_W(A)\times P(A_3) \\[5pt]
& &
+1\times P_W(B)\times P(B_1)+2\times P_W(B)\times P(B_2)+3\times P_W(B)\times P(B_3) \\[5pt]
&=&
P_W(A) \times \left(1\times P(A_1)+2\times P(A_2)+3\times P(A_3)\right) \\[5pt]
& &
+P_W(B) \times \left(1\times P(B_1)+2\times P(B_2)+3\times P(B_3)\right) \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。ここで、カッコ内は、それぞれ、箱Aを選んだときの期待値、箱Bを選んだときの期待値なので、\[ P_W(A)\times\frac{3}{2}+P_W(B)\times 1 \]と表せます。クケコサで求めた結果を使って計算すると、この期待値は\[ \frac{27}{59}\times\frac{3}{2}+\frac{32}{59}\times 1=\frac{145}{118} \]となります。
一方、(Y)の場合、花子さんが選んだ箱がAである確率は、太郎さんが選んだ箱がBである確率と等しく、花子さんが選んだ箱がBである確率は、太郎さんが選んだ箱がAである確率と等しいことと、選んだ箱を決めた後の期待値は先ほどと同じように計算できるので、この場合の当たりくじを引く回数の期待値は\[ P_W(B)\times\frac{3}{2}+P_W(A)\times 1 \]と表せます。具体的に計算すると\[ \frac{32}{59}\times\frac{3}{2}+\frac{27}{59}\times 1=\frac{150}{118}=\frac{75}{59} \]となります。
これらの結果から、 $\dfrac{145}{118}\lt\dfrac{150}{118}$ なので、(Y)のほうが期待値が大きいため、花子さんは太郎さんとは異なる箱を選んだほうがいいことがわかります。
解答
シ:3
スセ:23
トタチツテ:75591