京都大学 理学部特色入試 2025年度 第2問 解説
(2024年11月に行われた特色入試の問題です。)
問題編
問題
$n$ を $5$ 以上の自然数とする。 $\mathrm{K}, \mathrm{O}, \mathrm{T}, \mathrm{Y}$ が1文字ずつ書かれた4枚のカード\[ \boxed{ \mathrm{K} },\ \boxed{ \mathrm{O} },\ \boxed{ \mathrm{T} },\ \boxed{ \mathrm{Y} } \]を用意する。この4枚のカードから1枚を引き、書かれた文字を記録し、戻すという操作を $n$ 回繰り返し、記録された順に文字を左から並べる。
このとき、並んだ $n$ 個の文字の中に連続した文字列「$\mathrm{KYOTO}$」が現れる確率 $p_n$ が\[ p_n\geqq 1-\left(\frac{1023}{1024}\right)^{n-4} \]を満たすことを示せ。
ただし、上の操作においては、それぞれのカードを毎回独立に、等しい確率で引くものとする。
考え方
KYOTO を含む確率、と言っていますが、何個含むかはわからず、考えにくいので、(よくある手法ですが)含まない確率を考えます。ただ、含まないケースもなかなか考えづらいです。
$n$ 文字のケースと $n+1$ 文字のケースを比較して、どういう違いが出てくるかを考えます。
解答編
問題
$n$ を $5$ 以上の自然数とする。 $\mathrm{K}, \mathrm{O}, \mathrm{T}, \mathrm{Y}$ が1文字ずつ書かれた4枚のカード\[ \boxed{ \mathrm{K} },\ \boxed{ \mathrm{O} },\ \boxed{ \mathrm{T} },\ \boxed{ \mathrm{Y} } \]を用意する。この4枚のカードから1枚を引き、書かれた文字を記録し、戻すという操作を $n$ 回繰り返し、記録された順に文字を左から並べる。
このとき、並んだ $n$ 個の文字の中に連続した文字列「$\mathrm{KYOTO}$」が現れる確率 $p_n$ が\[ p_n\geqq 1-\left(\frac{1023}{1024}\right)^{n-4} \]を満たすことを示せ。
ただし、上の操作においては、それぞれのカードを毎回独立に、等しい確率で引くものとする。
解答
$q_n=1-p_n$ とする。これは、長さ $n$ の文字の中に $\mathrm{KYOTO}$ が含まれない確率である。
また、長さ $n$ の文字の中に $\mathrm{KYOTO}$ が含まれず、かつ、最後の4文字が $\mathrm{KYOT}$ である確率を $a_n$ とおく。
$q_n-q_{n+1}$ は、 長さ $n+1$ の文字の中で、はじめの $n$ 文字には $\mathrm{KYOTO}$ が含まれないが、 $n+1$ 文字目まで見ると $\mathrm{KYOTO}$ が含まれる確率である。つまり、 $n+1$ 文字の最後が $\mathrm{KYOTO}$ で終わっており、他に $\mathrm{KYOTO}$ を含まない確率なので、\[ q_n-q_{n+1}=\frac{1}{4}a_n \]が成り立つ。特に、 $q_n\geqq q_{n+1}$ もわかる。つまり、 $\{q_n\}$ は単調減少である。
$a_n$ は、 $\mathrm{KYOTO}$ を含まない $n-4$ 文字のあとに $\mathrm{KYOT}$ が続く確率なので\[ a_n=\frac{1}{4^4}q_{n-4} \]が成り立つ。
これらから
\begin{eqnarray}
q_n-q_{n+1}
&=&
\frac{1}{4}a_n \\[5pt]
&=&
\frac{1}{4^5}q_{n-4} \\[5pt]
&\geqq&
\frac{1}{1024}q_n \\[5pt]
\end{eqnarray}となるので、\[ \frac{1023}{1024}q_n \geqq q_{n+1} \]が成り立つ。
\begin{eqnarray}
q_n
& \leqq &
\frac{1023}{1024}q_{n-1} \\[5pt]
& \leqq &
\left(\frac{1023}{1024}\right)^2 q_{n-2} \\[5pt]
& \leqq &
\left(\frac{1023}{1024}\right)^{n-5} q_5 \\[5pt]
& = &
\left(\frac{1023}{1024}\right)^{n-5} \cdot\frac{1023}{1024} \\[5pt]
& = &
\left(\frac{1023}{1024}\right)^{n-4}
\end{eqnarray}となるので
\begin{eqnarray}
p_n=1-q_n\geqq 1-\left(\frac{1023}{1024}\right)^{n-4}
\end{eqnarray}が成り立つ。(終)
解説
よくある手法ですが、KYOTO を含まない確率を考えます。 $n$ 文字までと $n+1$ 文字までを考えたときに、 $n+1$ 文字までに KYOTO が含まれないケースとは
・$n$ 文字目までに KYOTO が含まれない
・最後の5文字が KYOTO ではない
の両方を満たすときです。1つ目が起こる確率が $q_n$ で、このときにさらに2つ目を考えるには、「KYOT で終わる」ケースも特別に考えたほうがいいことがわかります。このために $a_n$ を導入しています。
これらを用いて、 $q_n\leqq \left(\dfrac{1023}{1024}\right)^{n-4}$ を示せばいいのですが、等式ではなく不等式を示すので、少し方針の立て方が難しいです。
なお、含まない確率を考えるために、KYOT で終わりケース以外に、
・KYO で終わるケース
・KY で終わるケース
・K で終わるケース
・それ以外のケース
のそれぞれの確率を考える、という方針もあるでしょうが、計算が重すぎて時間内には間に合わないでしょう。