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京都大学 理学部特色入試 2025年度 第1問 解説

(2024年11月に行われた特色入試の問題です。)

問題編

問題

 $n$ を自然数とする。実数 $x$ に対し、 $x$ を超えない最大の整数を $[x]$ とし、 $f(x)=x-[x]$ と定める。このとき、 $1$ よりも大きく、かつ整数でないような実数 $x$ のうちで、\[ \lim_{n\to\infty} f\left(\frac{1}{nf(\sqrt[n]{x})}\right)=\frac{1}{2} \]を満たすものをすべて求めよ。

考え方

$n\to\infty$ のとき、 $\sqrt[n]{x}$ は $1$ に収束するので、 $f(\sqrt[n]{x})$ は $0$ に収束します。なので、 $n f(\sqrt[n]{x})$ は不定形型の極限を求めることになります。

極限を求められたら答えまでたどり着くのはそれほど難しくはありませんが、いくつか細かな議論をしないといけない部分があります。

解答編

問題

 $n$ を自然数とする。実数 $x$ に対し、 $x$ を超えない最大の整数を $[x]$ とし、 $f(x)=x-[x]$ と定める。このとき、 $1$ よりも大きく、かつ整数でないような実数 $x$ のうちで、\[ \lim_{n\to\infty} f\left(\frac{1}{nf(\sqrt[n]{x})}\right)=\frac{1}{2} \]を満たすものをすべて求めよ。

解答

$1$ より大きい $x$ に対し、自然数 $m$ を十分大きくとると\[ 1\lt x\lt 2^m \]とできる。 $n\gt m$ のとき
\begin{eqnarray} 1 \lt x \lt 2^n \\[5pt] 1 \lt \sqrt[n]{x} \lt 2 \\[5pt] \end{eqnarray}なので、このとき \begin{eqnarray} f(\sqrt[n]{x}) &=& \sqrt[n]{x}-[\sqrt[n]{x}] \\[5pt] &=& \sqrt[n]{x}-1 \\[5pt] \end{eqnarray}が成り立つ。よって、このとき \begin{eqnarray} \frac{1}{nf(\sqrt[n]{x})} &=& \frac{1}{n(\sqrt[n]{x}-1)} \\[5pt] &=& \frac{\frac{1}{n}-0}{x^\frac{1}{n}-x^0} \\[5pt] \end{eqnarray}が成り立つ。ここで、 $g(y)=x^y$ とすると、 $g'(y)=x^y \log x$ であり、 $g'(0)=\log x\ne 0$ より、 \begin{eqnarray} & & \lim_{n\to\infty} \frac{1}{nf(\sqrt[n]{x})} \\[5pt] &=& \lim_{n\to\infty} \frac{\frac{1}{n}-0}{x^\frac{1}{n}-x^0} \\[5pt] &=& \frac{1}{g'(0)} = \frac{1}{\log x} \end{eqnarray}となる。

ここで、 $\dfrac{1}{\log x}$ が整数だとすると、\[ \lim_{n\to\infty} f\left(\frac{1}{\log x}+\frac{1}{n}\right)= \lim_{n\to\infty} \frac{1}{n}=0 \]なので、 $f\left(\dfrac{1}{nf(\sqrt[n]{x})}\right)$ が $\dfrac{1}{2}$ に収束することはない。よって、\[ \lim_{n\to\infty} f\left(\frac{1}{nf(\sqrt[n]{x})}\right)=\frac{1}{2} \]が成り立つなら、 $\dfrac{1}{\log x}$ は整数ではない。

以下では、$\dfrac{1}{\log x}$ が整数でない場合を考える。

一般に、ある整数 $a$ を用いて $a\lt x\lt a+1$ と書けるとき、 $f(x)=x-a$ なので、 $a\lt x\lt a+1$ では $f(x)$ は連続だから、
\begin{eqnarray} \lim_{n\to\infty} f\left(\frac{1}{nf(\sqrt[n]{x})}\right) &=& \frac{1}{2} \\[5pt] f\left(\frac{1}{\log x}\right) &=& \frac{1}{2} \\[5pt] \frac{1}{\log x}-\left[\frac{1}{\log x}\right] &=& \frac{1}{2} \\[5pt] \end{eqnarray}となる。よって、 $\frac{1}{\log x}$ はある整数 $a$ を用いて、 $a+\frac{1}{2}$ と書ける。 $x\gt 1$ より $a=0,1,2,\cdots$ である。 \begin{eqnarray} \frac{1}{\log x} &=& a+\frac{1}{2}=\frac{2a+1}{2} \\[5pt] \log x &=& \frac{2}{2a+1} \\[5pt] x &=& e^{\frac{2}{2a+1}} \\[5pt] \end{eqnarray}となる。

なお、これが整数だとすると $x^{2a+1}$ も整数となり $e^2$ も整数となるが、 $2.7\lt e\lt 2.8$ なので整数ではない。よって、 $a$ が $0$ 以上の整数のとき、 $e^{\frac{2}{2a+1}}$ は整数ではないので、条件を満たす。

(答) $x=e^{\frac{2}{2a+1}}$ $(a$ は $0$ 以上の整数 $)$

解説

$n\to\infty$ のとき、 $\sqrt[n]{x}$ は $1$ に収束するので、 $n$ が十分大きいときは、 $f(\sqrt[n]{x})$ は $\sqrt[n]{x}-1$ となり、 $0$ に収束することがわかります。なので、分母は不定形型の極限を計算することになり、上の解答では $g(y)=x^y$ の微分の定義を使って計算しています。

なお、 $y=f(x)=x-[x]$ のグラフは次のようになります。

この問題では、 $n\to\infty$ のときに $a_n\to\alpha$ であっても、 $f(a_n)\to f(\alpha)$ とは限りません。 $x$ が整数のところでは $f(x)$ が不連続だからです。なので、上の解答では、まず整数のところは除外し、連続の箇所だけを考えるようにしています。

「$x$ が整数でない」という条件は、分母が $0$ にならないための条件です。しかし、この条件があるために、最後に計算した答えが整数でないか、のチェックも必要となります。

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