京都大学 理系 2024年度 第6問 解説
問題編
問題
自然数 $k$ に対して、 $a_k=2^{\sqrt{k}}$ とする。 $n$ を自然数とし、 $a_k$ の整数部分が $n$ 桁であるような $k$ の個数を $N_n$ とする。また、 $a_k$ の整数部分が $n$ 桁であり、その最高位の数字が $1$ であるような $k$ の個数を $L_n$ とする。次を求めよ。\[ \lim_{n\to\infty}\frac{L_n}{N_n} \]ただし、例えば実数 $2345.678$ の整数部分 $2345$ は $4$ 桁で、最高位の数字は $2$ である。
考え方
$N_n$ や $L_n$ をピッタリと求めることは難しいです。最終的に極限がわかればいいのだから、ざっくりとした個数がわかればよく、いくつ以上いくつ以下か、がわかれば十分です。
「整数部分が $n$ 桁」などを不等式で表すのはよくあるので、後はこれらを組み合わせればいいです。答えの予想まではできても、説明が少し長ったらしくなってしまいます。
解答編
問題
自然数 $k$ に対して、 $a_k=2^{\sqrt{k}}$ とする。 $n$ を自然数とし、 $a_k$ の整数部分が $n$ 桁であるような $k$ の個数を $N_n$ とする。また、 $a_k$ の整数部分が $n$ 桁であり、その最高位の数字が $1$ であるような $k$ の個数を $L_n$ とする。次を求めよ。\[ \lim_{n\to\infty}\frac{L_n}{N_n} \]ただし、例えば実数 $2345.678$ の整数部分 $2345$ は $4$ 桁で、最高位の数字は $2$ である。
解答
$a_k$ の整数部分が $n$ 桁であることは、\[ 10^{n-1} \leqq a_k \lt 10^n \] を満たすことと同値である。
\begin{eqnarray}
& &
10^{n-1} \leqq a_k \lt 10^n \\[5pt]
&\iff&
n-1 \leqq \sqrt{k}\log_{10}2 \lt n \\[5pt]
&\iff&
\frac{n-1}{\log_{10}2} \leqq \sqrt{k} \lt \frac{n}{\log_{10}2} \\[5pt]
\end{eqnarray}であり、各辺は $0$ 以上なので、 $\log_{10}2=K$ とおくと
\begin{eqnarray}
& &
\frac{n-1}{\log_{10}2} \leqq \sqrt{k} \lt \frac{n}{\log_{10}2} \\[5pt]
&\iff&
\frac{(n-1)^2}{K^2} \leqq k \lt \frac{n^2}{K^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
一般に、正の実数 $A$ に対して、 $k\lt A$ を満たす自然数の個数は、 $A-1$ 以上 $A$ 以下である。よって、先ほどの不等式を満たす自然数 $k$ の個数は、最大で
\begin{eqnarray}
& &
\frac{n^2}{K^2} -\left(\frac{(n-1)^2}{K^2}-1\right) \\[5pt]
&=&
\frac{n^2}{K^2} -\frac{n^2-2n+1}{K^2}+1 \\[5pt]
&=&
\frac{2n-1}{K^2} +1 \\[5pt]
\end{eqnarray}であり、最小で
\begin{eqnarray}
& &
\frac{n^2}{K^2}-1 -\frac{(n-1)^2}{K^2} \\[5pt]
&=&
\frac{2n-1}{K^2} -1 \\[5pt]
\end{eqnarray}である。よって、\[ \frac{2n-1}{K^2} -1 \leqq N_n \leqq \frac{2n-1}{K^2} +1 \]が成り立つ。
$a_k$ の整数部分が $n$ 桁で、最高位が $1$ であることは、\[ 10^{n-1} \leqq a_k \lt 2\cdot 10^{n-1} \] を満たすことと同値である。
\begin{eqnarray}
& &
10^{n-1} \leqq a_k \lt 2\cdot 10^{n-1} \\[5pt]
&\iff&
n-1 \leqq \sqrt{k}\log_{10}2 \lt n-1 +\log_{10}2 \\[5pt]
&\iff&
\frac{n-1}{K} \leqq \sqrt{k} \lt \frac{n-1}{K}+1 \\[5pt]
&\iff&
\left(\frac{n-1}{K}\right)^2 \leqq k \lt \left(\frac{n-1}{K}+1\right)^2 \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
最後の不等式を満たす自然数 $k$ の個数は、先ほどと同じように計算すると、最大で
\begin{eqnarray}
& &
\left(\frac{n-1}{K}+1\right)^2 -\left\{\left(\frac{n-1}{K}\right)^2-1\right\} \\[5pt]
&=&
\frac{2n-2}{K} +2 \\[5pt]
\end{eqnarray}であり、最小で $\dfrac{2n-2}{K}$ だとわかる。よって、\[ \frac{2n-2}{K} \leqq L_n \leqq \frac{2n-2}{K} +2 \]が成り立つ。
以上から
\begin{eqnarray}
\frac{L_n}{N_n}
& \leqq &
\frac{ \frac{2n-2}{K} +2 }{ \frac{2n-1}{K^2} -1 } \\[5pt]
& = &
\frac{ K(2n-2) +2K^2 }{ 2n-1 -K^2 } \\[5pt]
& = &
\frac{ 2K+\frac{-2K+2K^2}{n} }{ 2-\frac{1+K^2}{n} } \\[5pt]
\end{eqnarray}であり、最後の式を $n\to\infty$ とすると $\dfrac{2K}{2}=K$ に収束する。また、
\begin{eqnarray}
\frac{L_n}{N_n}
& \geqq &
\frac{ \frac{2n-2}{K} }{ \frac{2n-1}{K^2} +1 } \\[5pt]
& = &
\frac{ K(2n-2) }{ 2n-1 +K^2 } \\[5pt]
& = &
\frac{ 2K-\frac{2K}{n} }{ 2-\frac{1-K^2}{n} } \\[5pt]
\end{eqnarray}であり、最後の式を $n\to\infty$ とすると $\dfrac{2K}{2}=K$ に収束する。よって、はさみうちの原理から
\begin{eqnarray}
\lim_{n\to\infty} \frac{L_n}{N_n} &=& K = \log_{10} 2
\end{eqnarray}となる。(答)