京都大学 理系 2024年度 第5問 解説
問題編
問題
$a$ は $a\geqq 1$ を満たす定数とする。座標平面上で、次の4つの不等式が表す領域を $D_a$ とする。\[ x\geqq 0,\ \frac{e^x-e^{-x}}{2}\leqq y,\ y\leqq \frac{e^x+e^{-x}}{2},\ y\leqq a \]次の問いに答えよ。
(1) $D_a$ の面積 $S_a$ を求めよ。
(2) $\displaystyle \lim_{a\to\infty} S_a$ を求めよ。
考え方
計算は少し煩雑です。(2)は(1)を使って解くこともできますが、 $\log$ の極限がなかなか難しいです。無視して解くこともできます。
解答編
問題
$a$ は $a\geqq 1$ を満たす定数とする。座標平面上で、次の4つの不等式が表す領域を $D_a$ とする。\[ x\geqq 0,\ \frac{e^x-e^{-x}}{2}\leqq y,\ y\leqq \frac{e^x+e^{-x}}{2},\ y\leqq a \]次の問いに答えよ。
(1) $D_a$ の面積 $S_a$ を求めよ。
解答
(1)
$f(x)=\dfrac{e^x+e^{-x}}{2}$, $g(x)=\dfrac{e^x-e^{-x}}{2}$ とする。 $2f'(x)=e^x-e^{-x}=e^{-x}(e^{2x}-1)$, $2g'(x)=e^x+e^{-x}$ なので、 $x\geqq 0$ の範囲で、 $f(x)$ も $g(x)$ も狭義単調増加である。また、 $f(x)\geqq g(x)$ が成り立つ。
$x\geqq 0$ の範囲で $f(x)=a$ を満たす $x$ を求めると
\begin{eqnarray}
e^x+e^{-x} &=& 2a \\[5pt]
e^{2x}-2ae^x+1 &=& 0 \\[5pt]
e^x &=& a\pm\sqrt{a^2-1} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。ここで、$a\gt 1$ のときは
\begin{eqnarray}
& &
a-\sqrt{a^2-1} \\[5pt]
&=& \frac{(a-\sqrt{a^2-1})(a+\sqrt{a^2-1})}{a+\sqrt{a^2-1}} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{a+\sqrt{a^2-1}} \leqq 1=e^0 \\[5pt]
\end{eqnarray}なので、 $e^x=a+\sqrt{a^2-1}$ となる。 $a=1$ のときは $e^x=1$ なので、このときもこの式を満たす。よって、 $f(x)=a$ を満たす $x$ は $\log(a+\sqrt{a^2-1})$ となることがわかる。この値を $A$ とおく。
$g(x)=a$ とすると
\begin{eqnarray}
e^x-e^{-x} &=& 2a \\[5pt]
e^{2x}-2ae^x-1 &=& 0 \\[5pt]
e^x &=& a\pm\sqrt{a^2+1} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。 $e^x\gt 0$ より、 $e^x=a+\sqrt{a^2+1}$ であり、 $x=\log(a+\sqrt{a^2+1})$ となることがわかる。この値を $B$ とおく。
$S_a$ を求めるには、 $x\geqq 0$ の範囲で、 $y=a$ と $y=g(x)$ で囲まれた部分から、 $y=a$ と $y=f(x)$ で囲まれた部分を引けばよいので
\begin{eqnarray}
S_a
&=&
\int_0^B (a-g(x)) dx-\int_0^A (a-f(x)) dx \\[5pt]
&=&
\int_0^A f(x) dx -\int_0^B g(x) dx +\int_A^B a dx \\[5pt]
&=&
\int_0^A \frac{e^x+e^{-x}}{2} dx -\int_0^B \frac{e^x-e^{-x}}{2} dx +a(B-A) \\[5pt]
&=&
\left[\frac{e^x-e^{-x}}{2}\right]_0^A-\left[\frac{e^x+e^{-x}}{2}\right]_0^B +a(B-A) \\[5pt]
&=&
\frac{e^A-e^{-A}}{2}-0-\frac{e^B+e^{-B}}{2}+1 +a(B-A) \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。ここで
\begin{eqnarray}
e^A &=& a+\sqrt{a^2-1} \\[5pt]
e^{-A} &=& \frac{1}{a+\sqrt{a^2-1}}=a-\sqrt{a^2-1} \\[5pt]
e^B &=& a+\sqrt{a^2+1} \\[5pt]
e^{-B} &=& \frac{1}{a+\sqrt{a^2+1}}=-(a-\sqrt{a^2+1}) \\[5pt]
\end{eqnarray}だから
\begin{eqnarray}
S_a
&=&
\frac{e^A-e^{-A}}{2}-\frac{e^B+e^{-B}}{2}+1 +a(B-A) \\[5pt]
&=&
\sqrt{a^2-1}-\sqrt{a^2+1}+1 +a\log\frac{a+\sqrt{a^2+1}}{a+\sqrt{a^2-1}} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。(答)
解答編 つづき
問題
(2) $\displaystyle \lim_{a\to\infty} S_a$ を求めよ。
解答
(2)
$x\geqq 0$, $y\geqq g(x)$, $y\leqq f(x)$, $x\leqq a$ で表される領域の面積を $T_a$ で表すと、\[ T_A \leqq S_a\leqq T_B \]が成り立つ。また
\begin{eqnarray}
T_a
&=&
\int_0^a (f(x)-g(x)) dx \\[5pt]
&=&
\int_0^a e^{-x} dx \\[5pt]
&=&
[ -e^{-x} ]_0^a \\[5pt]
&=&
-e^{-a}+1 \\[5pt]
\end{eqnarray}なので、$a\to \infty$ のとき $T_a\to 1$ である。 $a\to \infty$ のとき、 $A\to\infty$, $B\to\infty$ なので、はさみうちの原理から\[ \lim_{a\to\infty} S_a=1 \]となる。(答)