【基本】ベクトルの分解

他の記事で、ベクトルの足し算ベクトルの定数倍を扱いましたが、ここでは、逆に、あるベクトルを2つのベクトルに分解することについて見ていきます。

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ベクトルの分解に関する導入

【基本】ベクトルの平行で見たように、2つのベクトルが平行なら、片方を定数倍すればもう片方のベクトルと同じになるようにできます。例えば、 $\vec{u}$ と $\vec{v}$ が $\vec{0}$ ではない平行なベクトルだとすると、\[ \vec{u}=k\vec{v} \]を満たす k が存在します。逆に、このように書ける場合は、2つのベクトルは平行です。

言い換えれば、 $\vec{a}$ と平行ではないベクトル $\vec{p}$ があったとすると、 $\vec{a}$ を何倍しても $\vec{p}$ になることはない、ということです。ただ、これは、「1つのベクトルで表そうとするから」無理なのであって、もう1つベクトルを増やすと話は変わってきます。

つまり、 $\vec{p}$ というベクトルを、 $\vec{0}$ ではない2つのベクトル $\vec{a}$, $\vec{b}$ を使って表すことができないか、ということです。なお、 $\vec{a}$, $\vec{b}$ が平行なら、足しても引いても定数倍しても平行なベクトルしか出てこないので、この2つのベクトルは平行でないとします。

もしこれができれば、どんなベクトルでも、2つのベクトルを使って表すことができるので、この2つのベクトルを、新しい軸のように使うことができるんですね。はじめはこれが何を意味しているかは分かりにくいと思いますが、ベクトルについて学んでいくうちに、この便利さがだんだんわかってくるはずです。

ベクトルの分解

さて、 $\vec{0}$ ではなく、平行でもない2つのベクトル $\vec{a}$, $\vec{b}$ を使って、任意のベクトル $\vec{p}$ を表す方法を考えてみましょう。

下の図のように、それぞれの始点を合わせて考えてみます。

始点を O とし、 $\overrightarrow{ \mathrm{ OA } }=\vec{a}$, $\overrightarrow{ \mathrm{ OB } }=\vec{b}$, $\overrightarrow{ \mathrm{ OP } }=\vec{p}$ となるように、 A, B, P をとります。

ここで、直線 OA と、 P を通り OB に平行な直線との交点を $\mathrm{ A }’$ とします。また、直線 OB と、 P を通り OA に平行な直線との交点を $\mathrm{ B }’$ とします。

こうすると、\[ \vec{p}=\overrightarrow{ \mathrm{ OA’ } }+\overrightarrow{ \mathrm{ OB’ } } \]と書けることがわかります。

また、 $\mathrm{ OA }$ と $\mathrm{ OA’ }$ は平行なので、 $\overrightarrow{ \mathrm{ OA’ } }=s\overrightarrow{ \mathrm{ OA } }$ となる s が存在します。同様に、 $\overrightarrow{ \mathrm{ OB’ } }=t\overrightarrow{ \mathrm{ OB } }$ となる t も存在します。よって、\[ \vec{p}=s\vec{a}+t\vec{b} \]と書けることがわかります。

これで、2つのベクトルに分解できることがわかりました。平行四辺形のように分解することから、2つのベクトルが平行でないという条件が大事であることがわかります。

分解の表し方は何通りか

さて、上では、 $\vec{0}$ ではなく、平行でもない2つのベクトル $\vec{a}$, $\vec{b}$ を使えば、どんなベクトル $\vec{p}$ でも\[ \vec{p}=s\vec{a}+t\vec{b} \]と分解できることを見ました。ここでは、この分解の方法が何通りあるか、について見ていきます。

といっても、上の分解の仕方から、1通りであることは予想できますが。

もし、 $\vec{p}$ が\[ \vec{p}=s’\vec{a}+t’\vec{b} \]とも分解できたとしましょう。このとき、
\begin{eqnarray}
s\vec{a}+t\vec{b}&=&s’\vec{a}+t’\vec{b} \\[5pt] (s-s’)\vec{a}&=&(t-t’)\vec{b} \\[5pt] \end{eqnarray}となります。もし、 $s-s’\ne 0$ なら両辺をこれで割ると、 $\vec{a}$ は $\vec{b}$ の定数倍、となってしまいます。これは2つのベクトルが平行であることに矛盾します。よって、 $s=s’$ です。また、左辺が $\vec{0}$ となり、 $\vec{b}\ne\vec{0}$ なので、 $t=t’$ もわかります。

つまり、分解の表し方は1通りであることがわかります。

ベクトルの分解に関するまとめ

今までのことをまとめておきましょう。

ベクトルの分解(平面ベクトルの場合)
$\vec{0}$ ではなく、平行でもない2つのベクトル $\vec{a}$, $\vec{b}$ があるとする。このとき、任意のベクトル $\vec{p}$ は、実数 s, t を使って、次の形に1通りで表すことができる。\[ \vec{p}=s\vec{a}+t\vec{b} \]

分解できること、1通りに書けること、どちらも大事です。また、2つのベクトルが平行でない、という条件も大事です。この条件がなければ、分解できるとはいえません。

おわりに

ここでは、ベクトルを2つのベクトルに分解することについて見てきました。平行四辺形を作って分解する、というイメージを頭に入れておきましょう。そうすると、「2つのベクトルが平行でない、という条件が必要だ」ということも理解しやすいでしょう。