【標準】ベクトルの内積と二等辺三角形

ここでは、ベクトルの内積を使って、二等辺三角形に関する性質を見直してみます。

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二等辺三角形の底辺の中点

三角形 ABC は、 $\mathrm{ AB }=\mathrm{ AC }$ の二等辺三角形とします。また、 BC の中点を点 D とします。

このとき、 ADBC は垂直に交わります。

図形的に考えても、これを示すのはそれほど難しくはありません。 仮定から、 $\mathrm{ AB }=\mathrm{ AC }$ と $\mathrm{ BD }=\mathrm{ CD }$ が成り立ち、 AD は共通なので、三角形 ABD と三角形 ACD について、3組の辺がそれぞれ等しいことがわかります。よって、この2つの三角形は合同です。なので、 $\angle \mathrm{ ADB }=\angle \mathrm{ ADC }=90^{\circ}$ となります。

これを踏まえて、ベクトルの話を見ていきましょう。

ベクトルの内積と二等辺三角形

先ほど見た内容を、ベクトルの内積を使って考えてみましょう。

「垂直」というのは、ベクトルの世界では「内積が $0$ 」と言い換えることができます(参考:【基本】ベクトルの内積となす角)。これを示すことを目標に、考えていきます。

まず、ベースとなるベクトルを決めましょう。 $\overrightarrow{ \mathrm{ AB } }=\vec{b}$, $\overrightarrow{ \mathrm{ AC } }=\vec{c}$ とおくのが自然でしょう。二等辺三角形なので、\[ |\vec{b}| = |\vec{c}| \]が成り立ちます。

もう一つの点 D についても考えましょう。これは中点なので、【標準】三角形とベクトルの演算で見たように、\[ \overrightarrow{ \mathrm{ AD } }=\frac{\vec{b}+\vec{c}}{2} \]となります。「中間にある点だから、足して2で割るんだな」と覚えてもいいし、
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{ \mathrm{ AD } }
&=&
\overrightarrow{ \mathrm{ AB } }+\frac{1}{2}\overrightarrow{ \mathrm{ BC } } \\[5pt] &=&
\vec{b}+\frac{\vec{c}-\vec{b}}{2} \\[5pt] &=&
\frac{\vec{b}+\vec{c}}{2} \\[5pt] \end{eqnarray}と考えてもいいです。

これらの結果から、ベクトルの内積を計算してみましょう。
\begin{eqnarray}
& &
\overrightarrow{ \mathrm{ AD } } \cdot \overrightarrow{ \mathrm{ BC } } \\[5pt] &=&
\frac{\vec{b}+\vec{c}}{2} \cdot \left(\vec{c}-\vec{b}\right) \\[5pt] \end{eqnarray}さらに、【基本】ベクトルの内積の性質で見た内容から、ベクトルの内積については分配法則が成り立つので、展開して
\begin{eqnarray}
& &
\overrightarrow{ \mathrm{ AD } } \cdot \overrightarrow{ \mathrm{ BC } } \\[5pt] &=&
\frac{1}{2} \left(\vec{c}\cdot\vec{c}-\vec{b}\cdot\vec{b}\right) \\[5pt] &=&
\frac{1}{2} \left(|\vec{c}|^2-|\vec{b}|^2\right) \\[5pt] \end{eqnarray}と計算できます。最後の式変形も、【基本】ベクトルの内積の性質で見た「同じベクトル同士の内積」の部分を使っています。

$\mathrm{ AB }=\mathrm{ AC }$ なので、最後の式のカッコ内は $0$ だから、\[ \overrightarrow{ \mathrm{ AD } } \cdot \overrightarrow{ \mathrm{ BC } }=0 \]が得られます。

このようにして、 ADBC が垂直であることを、ベクトルの内積を用いて示すことができます。

計算によって図形の性質が示せる、というのがベクトルのいいところです。

おわりに

ここでは、「二等辺三角形の頂角と底辺の中点を結んだ線が底辺と垂直に交わる」ことをベクトルの内積を用いて示しました。途中の計算では、ベクトルの内積の性質を使っています。計算方法は、きちんと押さえておきましょう。

内積と垂直の関係あたりから、ベクトルの便利さが実感できるようになってきます。【導入】ベクトルを考える意味についてで挙げた例も、内積を学べば、さらに理解しやすくなるでしょう。