【発展】タクシーの乗り方の総数を数えていたら、自然数の和・2乗の和・3乗の和の公式が出てくる話

ここでは、自然数の和、2乗の和、3乗の和の公式を、場合の数の観点から導いてみます。ちょっと変わったタクシーの乗り方の総数を数えていきましょう。

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ちょっと変わったタクシーの乗り方

以下では、和の公式を場合の数を使って導くため、ちょっと変わったタクシーの乗り方を考えます。

以下のように、タクシーが1列に並んでいるとします。〇がタクシーです。

 〇〇〇〇〇〇

すべて左向きで、左が先頭だとします。

このタクシーに、A, B, C, D の4人が乗る方法を考えます。ただし、以下の2つのルールを満たすものだけを考えます。

 1. Aさんは1人でタクシーに乗る。
 2. Aさん以外の人は、Aさんより後ろのタクシーに乗る。

例えば、Aさんが前から2番目のタクシーに乗ったとすると、他の人は前から3番目以降のタクシーに乗ることになります。逆に、Aさんが後ろから2番目のタクシーに乗ったとすると、他の人は一番後ろのタクシーにしか乗れません。

こういうルールでタクシーに乗る方法が何通りあるかを考えていきましょう。

2人の場合

まずは、A, B の2人がタクシーに乗る方法を考えましょう。また、はじめはタクシーは6台並んでいるとします。

 〇〇〇〇〇〇

Aさんがタクシーに乗る位置で場合分けをしましょう。

Aさんが一番後ろに乗ると、Bさんは乗れないので、このケースはありえません。

Aさんが後ろから2番目に乗れば、Bさんは一番後ろに乗る、つまり、乗り方は1通りです。

Aさんが後ろから3番目に乗れば、Bさんは後ろから1番目か2番目に乗る、つまり、乗り方は2通りです。

Aさんが後ろから4番目に乗れば、Bさんは後ろから1番目か2番目か3番目に乗る、つまり、乗り方は3通りです。

同様に考えれば、後ろから5番目のときはBさんの乗り方は4通り、後ろから6番目(=先頭)のときは5通りです。

これらの乗り方にはダブりがなく、これら以外にルールを満たす乗り方はありません。よって、タクシーが6台並んでいるとき、今考えているルールを満たす乗り方の総数は、\[ 1+2+3+4+5 \]通りとなります。

このタクシーの乗り方を、別の方法で求めてみましょう。先ほどはAさんの乗る位置で場合分けをしましたが、2人が乗るタクシーを先に決める、という方法で数えてみます。2人が乗るタクシーを決めれば、前の方にあるタクシーにAさんが乗り、後ろ側にあるタクシーにBさんが乗ればいいですね。つまり、乗るタクシーを選べば、乗り方は1通りに決まることになります。

今、タクシーは6台あって、そこから2人が乗るタクシー2台を選べばいいので、選び方は\[ {}_6\mathrm{ C }_2 \]通りとなります。

「Aさんが乗る方法で場合分けする方法」でも、「乗るタクシーを決めてから数える方法」でも、答えは同じになるはずです。なので、\[ 1+2+3+4+5={}_6\mathrm{ C }_2 \]が成り立ちます。この右辺は $\dfrac{1}{2}\times 6 \times 5$ なので、これは自然数の和の公式そのものなんですね。

ここまでは6台の場合で考えましたが、一般的な場合でも考えてみましょう。

$n+1$ 台のタクシーがあるとします。Aさんが乗る位置で場合分けをすると、後ろから2番目の場合、後ろから3番目の場合、…、後ろから $n+1$ 番目(=先頭)の場合のそれぞれの場合について、Bさんの乗り方は、1通り、2通り、…、n 通り、となるので、乗り方の総数は\[1+2+3+\cdots+n\]通りとなります。一方、乗るタクシーを先に選ぶ方法の場合、 $n+1$ 台から2台を選ぶので\[ {}_{n+1} \mathrm{ C }_2=\frac{(n+1)n}{2\cdot 1} \]通りとなります。両者は同じなので、\[ 1+2+3+\cdots+n = \frac{1}{2}n(n+1) \]が成り立つことがわかります。タクシーの乗り方を数えていたら、自然数の和の公式が出てきましたね。(参考:【基本】和の公式(1からnまでの和)

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3人の場合

続いて、今度は、A, B, C の3人が、今考えているルールでタクシーに乗る方法を考えましょう。

再び、タクシーは6台並んでいるとします。

 〇〇〇〇〇〇

Aさんがタクシーに乗る位置で場合分けをしましょう。

Aさんが一番後ろに乗るケースはありません。

Aさんが後ろから2番目に乗れば、BさんもCさんも一番後ろに乗る、つまり、乗り方は1通りです。

Aさんが後ろから3番目に乗れば、Bさんは後ろから1番目か2番目に乗るし、Cさんも後ろから1番目か2番目に乗る、つまり、乗り方は $2\times 2$ 通りです。

今回は2乗が出てくるんですね。

同様に考えれば、Aさんが後ろから4番目のタクシーに乗るときは B,C の乗り方は $3^2$ 通り、後ろから5番目のときは $4^2$ 通り、後ろから6番目(先頭)のときは $5^2$ 通りとなります。

よって、タクシーが6台並んでいるとき、今考えているルールを満たす3人の乗り方の総数は、\[ 1^2+2^2+3^2+4^2+5^2 \]通りとなります。

続いて、3人が乗るタクシーを先に決める、という方法で数えてみます。2人の場合と異なるのは、乗るタクシーの台数が2通りある、ということです。B, C の2人が同じタクシーに乗るならタクシーは2台選ぶことになるし、B, C の2人が違うタクシーに乗るならタクシーは3台選ぶことになります。この2パターンを合計しないといけません。

まず、B, C の2人が同じタクシーに乗る場合を考えましょう。この場合、タクシーを2台選んだあとは、前の方に A が乗り、後ろの方のタクシーに B, C が乗ればいいので、 ${}_6\mathrm{ C }_2$ 通りとなります。

次に、B, C の2人が違うタクシーに乗る場合です。この場合は、タクシーを3台選ぶことになります。選んだ3台のうち、前の方には A が乗るとして、他の2台にどう乗るかは2通りあります。B が前の場合と C が前の場合です。よって、この乗り方は ${}_6\mathrm{ C }_3\times 2$ 通りとなります。

ここまでの内容を踏まえて、一般的な場合を考えてみましょう。

$n+1$ 台のタクシーがあるとします。Aさんが乗る位置で場合分けをすると、後ろから2番目の場合、後ろから3番目の場合、…、後ろから $n+1$ 番目(=先頭)の場合のそれぞれについて、BさんとCさんの乗り方は、 $1^2$ 通り、 $2^2$ 通り、…、 $n^2$ 通り、となるので、乗り方の総数は\[ 1^2+2^2+3^2+\cdots+n^2 \]通りとなります。

一方、乗るタクシーを先に選ぶ方法の場合を考えます。Bさん、Cさんが同じタクシーに乗る場合は、 $n+1$ 台から2台を選べばいいので\[ {}_{n+1} \mathrm{ C }_2 \]通りとなります。また、Bさん、Cさんが違うタクシーに乗る場合は、 $n+1$ 台から3台を選んだ後、Bさんが前に乗るケースとCさんが前に乗るケースの2通りあるため、\[ {}_{n+1} \mathrm{ C }_3 \times 2 \]通りとなります。

両者は同じなので、
\begin{eqnarray}
& &
1^2+2^2+3^2+\cdots+n^2 \\[5pt] &=&
{}_{n+1} \mathrm{ C }_2 +{}_{n+1} \mathrm{ C }_3 \times 2 \\[5pt] &=&
\frac{(n+1)n}{2\cdot1} +\frac{(n+1)n(n-1)}{3\cdot2\cdot1} \times 2 \\[5pt] &=&
\frac{(n+1)n}{2} +\frac{(n+1)n(n-1)}{3} \\[5pt] &=&
\frac{3(n+1)n+2(n+1)n(n-1)}{6} \\[5pt] &=&
\frac{n(n+1) \{ 3+2(n-1)\} }{6} \\[5pt] &=&
\frac{n(n+1)(2n+1)}{6} \\[5pt] \end{eqnarray}が成り立つことがわかります。タクシーの乗り方を数えていたら、2乗の和の公式が出てきましたね。(参考:【基本】和の公式(2乗の和)

なお、細かい話ですが、 $n=1$ のときは、タクシーが2台なので、3人が別々のタクシーに乗ることができません。これは上の式の ${}_{n+1} \mathrm{ C }_3 \times 2$ の部分に対応するのですが、この式中に出てくる $n-1$ の部分を見ればわかる通り、この部分はちゃんと $0$ 通りになります。なので、 $n=1$ のときにも成り立つ式になっています。

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4人の場合

最後に、A, B, C, D の4人が、今考えているルールでタクシーに乗る方法を考えましょう。

2人の場合と3人の場合を踏まえて、今回はいきなり一般的な場合を考えてみます。

$n+1$ 台のタクシーがあるとします。Aさんが後ろから $k+1$ 番目のタクシーに乗ったとすると、 B, C, D の3人は、それぞれ後ろ k 台のタクシーのどれかに自由に乗ることができます。そのため、乗り方の総数は、 $k^3$ 通りとなります。

よって、Aさんが乗る位置で場合分けをすると、後ろから2番目の場合、後ろから3番目の場合、…、後ろから $n+1$ 番目(=先頭)の場合のそれぞれについて、BさんとCさんとDさんの乗り方は、 $1^3$ 通り、 $2^3$ 通り、…、 $n^3$ 通り、となるので、乗り方の総数は\[ 1^3+2^3+3^3+\cdots+n^3 \]通りとなります。

次に、乗るタクシーを先に選ぶ方法の場合を考えます。これは今までよりも少しケースが複雑になります。

まず、B, C, D の3人が同じタクシーに乗る場合が考えられます。このときは、Aさんが乗るタクシーと、B, C, D の3人が乗るタクシーのあわせて2台に乗ることになります。 $n+1$ 台から2台を選べばいいので\[ {}_{n+1} \mathrm{ C }_2 \]通りとなります。

また、B, C, D の3人のうち、2人だけが同じタクシーに乗る場合も考えられます。このときは、4人で乗るタクシーは3台ですね。 $n+1$ 台から3台を選んだ後は、「誰が1人で乗るか」を選ぶ方法が3通りあります。また、「2人が乗るタクシー」を、前のタクシーと後ろのタクシーのどちらにするかで、2通りあります。よって、このケースは\[ {}_{n+1} \mathrm{ C }_3 \times 3 \times 2 \]通りとなります。

最後に、 B, C, D の3人が、全員一人でタクシーに乗る場合が考えられます。この場合、乗るタクシーは4台なので、まず、 $n+1$ 台から4台を選ぶことになります。4台を選んだ後は、2台目、3台目、4台目にそれぞれ誰が乗るかを決めないといけません。これは、3人を1列に並べる方法の総数と同じです。以上から、\[ {}_{n+1} \mathrm{ C }_4 \times {}_3 \mathrm{ P }_3 \]通りとなります。

Aさんの乗る位置で場合分けをしても、タクシーを選んでから考えても、タクシーの乗り方の総数は変わらないので、
\begin{eqnarray}
& &
1^3+2^3+3^3+\cdots+n^3 \\[5pt] &=&
{}_{n+1} \mathrm{ C }_2 +{}_{n+1} \mathrm{ C }_3 \times 3 \times 2 +{}_{n+1} \mathrm{ C }_4 \times {}_3 \mathrm{ P }_3 \\[5pt] &=&
\frac{(n+1)n}{2\cdot1} +\frac{(n+1)n(n-1)}{3\cdot2\cdot1} \times 3 \times 2 \\
& & +\frac{(n+1)n(n-1)(n-2)}{4\cdot3\cdot2\cdot1} \times 3\cdot 2\cdot 1 \\[5pt] &=&
\frac{(n+1)n}{2} +(n+1)n(n-1) \\
& & +\frac{(n+1)n(n-1)(n-2)}{4} \\[5pt] &=&
\frac{n(n+1)}{4} \{ 2 +4(n-1) +(n-1)(n-2) \} \\[5pt] &=&
\frac{n(n+1)}{4} ( 2 +4n-4 +n^2-3n+2 ) \\[5pt] &=&
\frac{n(n+1)}{4} (n^2+n) \\[5pt] &=&
\frac{n^2(n+1)^2}{4} \\[5pt] \end{eqnarray}が成り立つことがわかります。これは3乗の和の公式です。

タクシーの乗り方を数えていたら、3乗の和の公式が出てきましたね。(参考:【基本】和の公式(3乗の和)

おわりに

ここでは、ちょっと変わったタクシーの乗り方の総数を数えることで、べき乗の和を場合の数の視点で考えてきました。

2人、3人、4人がタクシーに乗る場合の数を2種類の方法で数えました。片方からべき乗の和、片方から場合の数が出てくるので、これらをつなげれば、公式を導くことができます。

理論上は、同じようにすれば5人以上でも導くことができます。しかし、4人の場合を見てもわかる通り、タクシーを選んでから考える数え方は、かなり複雑になってしまいます。このやり方では、4人までが限界かもしれませんね。