🏠 Home / 数学II / 複素数と方程式 / 二次方程式と複素数

【基本】二次方程式の解と複素数

ここでは、数を複素数の範囲まで広げた結果、二次方程式の解がどのように変わるかを見ていきます。

📘 目次

二次方程式の解を再考する

$x^2+1=0$ という二次方程式は、実数の範囲では解を持ちません。しかし、【基本】複素数で見たように、数を複素数の世界まで広げると、 $x=\pm i$ という解を持つようになります。「持つようになる」というよりも、「解を持つように数の範囲を広げた」というほうが正確ですが。

このように、解をもつ状況が変わったので、二次方程式の解の公式をもう一度復習してみましょう。【基本】二次方程式の解の公式で書いた2つ目の方法とほとんど同じです。

\[ ax^2+bx+c=0 \]という二次方程式を考えましょう。 a, b, c はすべて実数で、 $a\ne 0$ とします。これを満たす x を求めましょう。

この式で、邪魔なものは $bx$ です。これがなければ、ルートを使ってすぐに答えが書けますからね。なので、この $bx$ が見た目から消えるように、平方完成を行います。
\begin{eqnarray} ax^2 +bx +c &=& 0 \\[5pt] x^2 +\frac{b}{a}x +\frac{c}{a} &=& 0 \\[5pt] \left(x +\frac{b}{2a}\right)^2 -\left(\frac{b}{2a}\right)^2 +\frac{c}{a} &=& 0 \\[5pt] \left(x +\frac{b}{2a}\right)^2 &=& \frac{b^2}{4a^2} -\frac{c}{a} \\[5pt] &=& \frac{b^2-4ac}{4a^2} \\[5pt] \end{eqnarray}ここまでの変形は、実数の範囲で考えても複素数の範囲で考えても、同じようにできます。違うのはここからです。

最後の式で両辺のルートを考えたいのですが、右辺の分子「 $b^2-4ac$ 」は、0以上とは限りません。実数の範囲では,、0以上の場合は平方根を考えることができますが、負の場合は考えられません。しかし、複素数の範囲まで数の範囲を広げれば、負の平方根も考えることができます(参考:【基本】負の数の平方根)。

2乗して $\dfrac{b^2-4ac}{4a^2}$ となるのは、分子が0以上か負かに関わらず、 $\pm\dfrac{\sqrt{b^2-4ac} }{2a}$ となります。よって、平方完成をした式から、次のように変形できます。
\begin{eqnarray} x +\frac{b}{2a} &=& \pm\dfrac{\sqrt{b^2-4ac} }{2a} \\[5pt] x &=& \dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac} }{2a} \\[5pt] \end{eqnarray}これが、解になります。

実数の範囲で考えたときと、同じ形の式が出てきました。しかし、式の形は同じでも、実数の世界で考えていたときは、重要な違いがあります。それは、この式は「 $b^2-4ac \geqq 0$ 」という条件がなくても使える、というところです。この条件がなくなった、というのが非常に大きな違いです。

二次方程式の解の公式
二次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の解は、\[ x = \dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac} }{2a} \]である。

例えば、 $x^2+x+1=0$ という二次方程式なら、解は
\begin{eqnarray} x=\frac{-1\pm\sqrt{1^2-4} }{2} = \frac{-1\pm\sqrt{3}i}{2} \end{eqnarray}となります。

実数解と虚数解

複素数 $a+bi$ に対し、 $b=0$ となるものを実数、 $b\ne 0$ となるものを虚数というのでした(参考:【基本】複素数)。これに対応して、方程式の解のうち、実数の解を実数解、虚数の解を虚数解といいます。

上で導いた二次方程式の解の公式からもわかりますが、実数解か虚数解かは、 $b^2-4ac$ の符号によって決まります。これが0以上のときは実数解、負のときは虚数解です。このように、 $b^2-4ac$ によって解の種類が判別できるため、これを二次方程式の判別式(discriminant)と呼びます。 D という式で表すことが多いです。

$D=0$ の場合は、実数解が1個で、正の場合は実数解が2個です。負の場合は、虚数解が2つです。まとめると、次のようになります。

二次方程式の判別式と解の個数
  • $D\gt 0$ なら、異なる2つの実数解を持つ
  • $D= 0$ なら、1つの実数解(重解)を持つ
  • $D\lt 0$ なら、異なる2つの虚数解を持つ

判別式は、すでに【基本】二次方程式の解の個数と判別式でも出てきているのですが、負の場合の扱いが変わっています。

おわりに

ここでは、複素数の範囲で二次方程式の解の公式を考えなおし、判別式についても考えなおしました。判別式が負の場合でも、解なしではなく、虚数解がある、と変わることに注意しましょう。

関連するページ

YouTubeもやってます

チャンネル登録はコチラから (以下は、動画のサンプルです)
慶應義塾大学薬学部2024年度数学第1問5 同志社大学文系2024年度数学第1問3 昭和大学医学部I期2024年度数学第2問 兵庫医科大学2024年度数学第3問 共通テスト2B2024年度第3問2のヒントについて 久留米大学医学部推薦2024年度数学第4問