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京都大学 文系 2016年度 第5問 解説

問題編

【問題】
実数を係数とする3次式$f(x)=x^3+ax^2+bx+c$に対し、次の条件を考える。

(イ) 方程式$f(x)=0$の解であるすべての複素数$\alpha$に対し、$\alpha^3$もまた$f(x)=0$の解である。
(ロ) 方程式$f(x)=0$の解は虚数解を少なくとも1つもつ。

この2つの条件(イ)、(ロ)を同時に満たす3次式をすべて求めよ。

【考え方】
解に関する条件が与えられているので、まず解がどうなるかを考えてから3次式を特定する、という順番で考えていきます。

条件を使って、候補を絞っていくところから始めます。条件(ロ)から、実数解1つと虚数解2つをもつことがわかります。条件(イ)より、この実数解は3乗するとどれかの解になりますが、それは実数なので、実数解は0、1、-1のどれかになる、というのはすぐにわかります。

虚数解については、条件(イ)を使って式を作っていくだけですが、複雑なので落ち着いて考えないと間違えてしまいます。

(2016/4/18 追記:以前載せていた解答は、複素数平面の知識が必要な解き方でした。そのため、複素数平面の知識がなくてもわかる解答に修正し、以前掲載していた解答は別解として最後にのせるようにしました。まぎらわしくてすみません。)


解答編

【問題】
実数を係数とする3次式$f(x)=x^3+ax^2+bx+c$に対し、次の条件を考える。

(イ) 方程式$f(x)=0$の解であるすべての複素数$\alpha$に対し、$\alpha^3$もまた$f(x)=0$の解である。
(ロ) 方程式$f(x)=0$の解は虚数解を少なくとも1つもつ。

この2つの条件(イ)、(ロ)を同時に満たす3次式をすべて求めよ。

【解答】
条件(ロ)より、虚数解が2つ、実数解が1つであることがわかる。この実数解をrとすると、条件(イ)より$r^3=r$であることがわかる。よって、$r=0,1,-1$となる。

虚数解の1つを$p+qi$とおく(pqは実数で、$q\gt 0$)。このとき、もう一つの虚数解は$p-qi$である。

条件(イ)より、$(p+qi)^3$は、$p+qi$、$p-qi$、rのどれかと等しくなる。$p+qi$と等しくなる時、$p+qi=0,1,-1$となるので、$q\gt 0$を満たさない。よって、残り2つの場合を考えればよい。

(1) $(p+qi)^3=p-qi$のとき
\begin{eqnarray} (p+qi)^3 &=& p-qi \\ p^3 +3p^2qi -3pq^2 -q^3i &=& p-qi \\ p^3 -3pq^2 -p &=& i(-3p^2q +q^3 -q) \\ \end{eqnarray}なので、$p^3 -3pq^2 -p =0 \cdots (A)$、かつ、$-3p^2q +q^3 -q=0 \cdots(B)$の両方が成り立たなくてはいけない。

(B)と$q\ne 0$より
\begin{eqnarray} -3p^2 +q^2 -1 &=& 0 \\ q^2 &=& 3p^2 +1 \cdots (C)\\ \end{eqnarray}だから、これを(A)へ代入して \begin{eqnarray} p^3 -3p(3p^2 +1) -p &=& 0 \\ p(p^2-9p^2-3-1) &=& 0 \\ p(-8p^2-4) &=& 0 \\ \end{eqnarray}

ここで、pは実数なので、$p=0$となる。よって、(C)と$q\gt 0$より、$q=1$がわかる。このとき、$(p-qi)^3=p+qi$となることもわかるので、$f(x)$は、$x(x-i)(x+i)$,$(x+1)(x-i)(x+i)$,$(x-1)(x-i)(x+i)$の3つとなる。それぞれ展開すると、$x^3+x$,$x^3+x^2+x+1$,$x^3-x^2+x-1$となる。

(2) $(p+qi)^3=r$のとき

$r=0,1,-1$であり、$q\ne 0$だから、このときは、$r=1,-1$となる。
\begin{eqnarray} (p+qi)^3 &=& r \\ p^3 +3p^2qi -3pq^2 -q^3i &=& r \\ p^3 -3pq^2 -r &=& i(-3p^2q +q^3) \\ \end{eqnarray}なので、$p^3 -3pq^2 -r =0 \cdots (D)$、かつ、$-3p^2q +q^3=0 \cdots(E)$の両方が成り立たなくてはいけない。

(E)より$q^2=3p^2$なので、これを(D)に代入して
\begin{eqnarray} p^3 -3p(3p^2) -r &=& 0 \\ -8p^3 &=& r \\ \end{eqnarray}となる。これより、$r=\pm 1$のとき、$p=\mp \frac{1}{2}$で、(E)と$q\gt 0$より$q=\frac{\sqrt{3} }{2}$が得られる。このとき、$(p-qi)^3=p+qi$となることもわかるので、$f(x)$は、$(x+1)\left(x-\frac{1}{2}-\frac{\sqrt{3} }{2}i\right)\left(x-\frac{1}{2}+\frac{\sqrt{3} }{2}i\right)$, $(x-1)\left(x+\frac{1}{2}-\frac{\sqrt{3} }{2}i\right)\left(x+\frac{1}{2}+\frac{\sqrt{3} }{2}i\right)$の2つとなる。それぞれ展開すると、$x^3+1$,$x^3-1$となる。

(1)(2)より、求める3次式は、次の5つとなる。
$x^3+x$、$x^3+x^2+x+1$、$x^3-x^2+x-1$、$x^3+1$、$x^3-1$

【解答終】

【解説】
虚数解を文字で置いて、条件式の実部虚部を比較するというやり方ですね。複雑なので、計算間違いをしないように解いていきましょう。

なお、複素数平面を習っていれば、次のような解き方でも可能です。


別解編

【問題】
実数を係数とする3次式$f(x)=x^3+ax^2+bx+c$に対し、次の条件を考える。

(イ) 方程式$f(x)=0$の解であるすべての複素数$\alpha$に対し、$\alpha^3$もまた$f(x)=0$の解である。
(ロ) 方程式$f(x)=0$の解は虚数解を少なくとも1つもつ。

この2つの条件(イ)、(ロ)を同時に満たす3次式をすべて求めよ。

【解答】
方程式$f(x)=0$の3つの解$x_1,x_2,x_3$を次のようにおく。
\begin{eqnarray} x_1 &=& r(\cos\theta + i\sin\theta) \\ x_2 &=& r(\cos\theta - i\sin\theta) \\ x_3 &=& p \end{eqnarray} ここで、pは実数である。また、条件(ロ)より、rは正の実数、$0 \lt \theta \lt \pi$としてよい。

条件(イ)より、$x_1^3,x_2^3,x_3^3$は、それぞれ$x_1,x_2,x_3$のどれかと等しい。
$x_3^3$は実数なので$x_3$と等しくなるしかない。つまり、$p^3=p$なので、$p=0,\pm 1$となる。
また、$|x_1^3|=r^3$は、$|r|$か$|p|$と等しいので、$r=1$となる。

$r=1$なので、$x_1 =\cos\theta + i\sin\theta$、$x_2 = \cos(-\theta) + i\sin(-\theta)$とかける。

以下では、$x_1^3$が、$x_1,x_2,x_3$のどれと等しいかで場合分けをする。なお、nは整数とする。

(1) $x_1^3=x_1$のとき
$x_1=0, \pm 1$なので、条件(ロ)を満たさない。

(2) $x_1^3=x_2$のとき
\begin{eqnarray} x_1^3 &=& \cos 3\theta + i\sin 3\theta \\ x_2 &=& \cos(-\theta) + i\sin(-\theta) \end{eqnarray}なので、$3\theta = -\theta + 2n\pi$と書ける。よって、$\theta = \frac{n\pi}{2}$となる。$0 \lt \theta \lt \pi$だったので、$n=1$しかなく、$\theta=\frac{\pi}{2}$となる。このとき、$x_1=i$、$x_2=-i$となり、$x_2^3=x_1$となることもわかる。

以上から、$f(x)=0$の解は、$(i,-i,0)、(i,-i,1)、(i,-i,-1)$の3通りしかない。$(x+i)(x-i)=x^2+1$なので、$f(x)$としてありえるのは、$x^3+x$、$x^3-x^2+x-1$、$x^3+x^2+x+1$となる。

(3) $x_1^3=x_3$のとき
まず、$p=1$のときは
\begin{eqnarray} x_1^3 &=& \cos 3\theta + i\sin 3\theta \\ x_3 &=& \cos 0 + i\sin 0 \end{eqnarray}なので、$3\theta = 2n\pi$と書ける。よって、$\theta = \frac{2n\pi}{3}$となる。$0 \lt \theta \lt \pi$だったので、$n=1$しかなく、$\theta=\frac{2\pi}{3}$となる。

$p=-1$のときは
\begin{eqnarray} x_1^3 &=& \cos 3\theta + i\sin 3\theta \\ x_3 &=& \cos \pi + i\sin \pi \end{eqnarray}なので、$3\theta = \pi + 2n\pi$と書ける。よって、$\theta = \frac{(2n+1)\pi}{3}$となる。$0 \lt \theta \lt \pi$だったので、$n=0$しかなく、$\theta=\frac{\pi}{3}$となる。

どちらの場合も、$3\theta$と$-3\theta$の差は$2\pi$の整数倍なので、$x_2^3=p$となることもわかる。

よって、$(x_1, x_2, x_3)=$$(\cos\frac{2\pi}{3} + i\sin\frac{2\pi}{3}, \cos\frac{-2\pi}{3} + i\sin\frac{-2\pi}{3}, 1)$,$(\cos\frac{\pi}{3} + i\sin\frac{\pi}{3}, \cos\frac{-\pi}{3} + i\sin\frac{-\pi}{3}, -1)$となる。

\begin{eqnarray} \left( x+\frac{1}{2} - i\frac{\sqrt{3} }{2} \right)\left( x+\frac{1}{2} + i\frac{\sqrt{3} }{2} \right)&=& x^2+x+1 \\[5pt] \left( x-\frac{1}{2} - i\frac{\sqrt{3} }{2} \right)\left( x-\frac{1}{2} + i\frac{\sqrt{3} }{2} \right)&=& x^2-x+1 \\[5pt] \end{eqnarray}なので、$f(x)$としてありえるのは、$x^3-1$、$x^3+1$となる。

(1)(2)(3)より、求める3次式は次の通りとなる。
$x^3-1$、$x^3+1$、$x^3+x$、$x^3-x^2+x-1$、$x^3+x^2+x+1$

【解答終】

【解説】
解答の序盤で「また、条件(ロ)より、rは正の実数、$0 \lt \theta \lt \pi$としてよい。」と書いていますが、これは、rが0でないこと、$\theta$が0や$\pi$でないことを言っています。

虚数解も絶対値がすぐにわかるので、あとは虚数解の偏角を求めれば、3つの解がわかり、3次式も得られます。場合分けが多く、落ち着いて考えないと混乱してくる問題です。

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